日本国内において、自死で亡くなられる方は年間で約2.1万人(2020年実績)。
特に若い世代の自死率は、他の国々と比較しても多くなっている。
今回は、YOMOYAMAのメンバー(日本に留学している留学生、及び、日本で生まれ育ったYOMOYAMA編集部メンバー)で、「自死」について話をした。
多様な価値観・バックボーンを持つメンバーで話すことで、問題の本質を探りたい。
YOMOYAMAでは、この問題について考え、話し合い、現状の打開に向けて取り組んで行きます。
【今回のメンバー】
なんとなく避けたくなる「自死」の話題。
今回は、改めてこの問題に向き合い、問題の本質について皆で話し合いたいと思います。
色んな視点から話し合うためにも、留学生の皆さんとデイスカッションをしました。
皆さん、自身のエピソードを交えながら話してくれました。
この表は、厚生労働省が発行している自殺対策白書(令和2年版)に記載されているものです。
15〜39歳の死因の第1位が自殺となっています。
この現状を見て、皆さんどう思いますか?
心の不調がこのような現状に繋がっていると思うのですが、日本の若者たちが心の不調に悩まされていると思うと、とても残念な気持ちになります。
そうですね。
ここまで多くの人たちが心身共に追い込まれ、自ら命をたたざるを得なかった。と思うと、同じ世代として本当残念な気持ちになりますね。
Kritiさんの周りにも、心の不調で悩んでいらっしゃる方はいらっしゃいますか?
大学の友達でも、常に不安を抱えてたり、自己評価が極端に低かったりなど、大きなストレスを抱えている友達がいます。
ちなみにインドでも、若者の死因の第一位は自殺です。
えっ、そうなんですか!
何かで読んだのですが、強制結婚などの結婚にまつわる理由、家族内の願望と期待のギャップの理由が、若者の自殺理由の上位を占めているみたいです。
インドの話も出たので、是非他の国々と比較してみたいと思うのですが、こちらの資料によると、先進国の中で日本だけが15〜34歳の死因の第1位が自殺なんです。
しかも割合が非常に多いです。。。
日本では、人々は自分のことよりも社会のことを考えることを求められている気がします。
親や社会、職場の期待に応えなくてはいけないというか…
また他の先進国に比べて日本は労働時間が長く、職場環境も厳しいです。
例えばインドネシアでは、人々は1日7時間しか働きません。(例外もありますが…)
またインドネシアや東南アジアのオフィス文化は、もう少し柔軟です。
もちろん職場におけるルールもありますが、社内でもいつも冗談を言い合って、お互いのパーソナルな面もよく知っています。
私も会社員として働いていますが、仰られる通りです。
たまには冗談も言い合いますが、それぞれが目の前の仕事に精一杯で、なかなか互いを気遣う余裕がありません。また互いのパーソナル な面について知らないことも多いと思います。
日本では、仕事は仕事、プライベートはプライベート、と割り切って考える人が多い気がするのですが、とでも残念だと思います。1週間のうち5日を職場で過ごすのであれば、職場にも人としての繋がりや感情的な繋がりが必要だと思います。
今は仕事とプライベートをしっかり分けていますが、垣根なく働くことで、充実感や幸福感を感じられるのは良い生き方だな、とKevinさんの話から思いました。
あと、こんなことも思います。もっと働く本人が、自分が何を望んでいるのかを知ることが必要なんじゃないかなあと。夢や趣味を聞かれても「分からない」と答える日本人によく会う気がします。
日本の労働条件は確かに過酷ですが、もう少し自分自身に向き合う事が必要だと思います。
自分が何を望んでるいるのか。。。
私の場合、正直、夢を語り合うのってどこか気恥ずかしくて、なかなか話題に上げません。
もっと当たり前に夢や好きなことを語り、応援し合える世の中になると良いですね。
そうですね。
自分自身を理解して、人生の目的や夢に気付けた時には、すべての出会いや出来事(失敗も含めて)がかけがいのない経験として捉えられるようになると思います。
私も思ったことを話しても良いですか。
もちろんです。
ぜひお願いします!
いくら生活水準が高い国だとしても、このような現状があるのなら意味を成さないように思います。正直、日本は先進国であるにも関わらず、国民のメンタルヘルスケアが遅れていると感じます。
健康な生活においてメンタルヘルスが重要な要素である。という認識が欠如していて、メンタルヘルスに関する情報やサポートが不足してますよね。
また思うんですけど、「経済の低迷で、若者たちが親世代と同等の生活を送れなくなってきていること」「労働条件が過酷であること」「社会からの期待や社会や周囲への適応を求められること」なども、日本におけるメンタルヘルスへの認識の遅れを引き起こしてるように感じます。
そうですね。
確かにOECDによって、日本は先進国、つまり高い生活水準にある国だと分類されています。
でも若者の死因の一位が自死という現状を踏まえると、高い生活水準というのが、生きてく際の幸せや充実感を示しているのか、考えさせられますね。
インドにおけるメンタルヘルスケアは、どうでしょうか?
インドでも、私が知る限り明確な仕組みはないと思います。
ほとんどの教育機関にはカウンセラーが常駐してますが、カウンセラーのところに行くのは、罰や悪いことのような偏見があります。また心理学を専攻する学生もまだ多くはありません。
もちろん、心の健康と意識の向上のために活動しているNGOがいくつかあったり、多くの若者が医療の助けを求めようともしています。
しかし、メンタルヘルスが社会から正当に評価されるようになるには、まだまだ長い道のりがありそうです。
先ほど、KevinさんもKritiさんも、日本の労働条件の悪さを指摘されてました。
ずっと日本だけに住んでいると、どう労働条件が悪いのか、イマイチ理解しきれていないように思います。
メディアや周りの人から得た情報にはなりますが、日本人はなかなか休暇を取らない文化があると聞いていました。
ただ最近は、会社が従業員に休暇を取るように要求したり、長時間働かないように要求したりすることもあるんですか?
近年は、長時間労働を是正する動きがありますので、会社側が従業員に対して、積極的に休暇を取得したり、残業制限を設けたりすることはありますね。
私の勤務先においても、会社全体として少なくとも年間5日の休暇の取得が義務付けられています。ですので、10年、20年前とは、状況が異なるかもしれませんね。
それは、驚きですね。。。
また、日本には、年功序列が根強いと思います。努力や創造性を発揮するインセンティブを阻害する可能性があると思うので、あまり良い制度だとは思いません。
本来は、上司の間違いを(もちろん丁寧に)指摘してもいいですし、上司が権力を乱用したり部下を搾取したりしてはいけないのです。年功序列や年齢にこだわらず才能を重視するようになれば、職場の雰囲気がよりオープンになり、従業員にとっても企業にとってもメリットがあると思います。
うーん、何も言えない。。。
まさにその通りですね。
また、少し言いにくいのですが、日本人は杓子定規ですね。
ルールを守ることは非常に重要ですが、あまりにも厳格すぎると創造性が妨げられ、特定の場面で迅速な行動ができなくなると思いますし、ストレスの原因にもなると思います。。。
そういえば、大学でこんなことがありました。
学園祭で売店を出すことになり、私たちはインドの伝統的なデザートを作ることになっていたのです。
でも、デザートは上手く作れませんでした。というのも、日本人のチームメンバーに、味をみて、砂糖の量を増やしたり、砂糖シロップに入れる水を増やしたりする調整をお願いしたにも関わらず、彼らは、何があってもレシピに従わなければならないという理由でレシビ通りに作ったんです。
最初は、理解に苦しみましたが、これが日本のやり方だということも理解していたので、押しつけることはしませんでした。とはいえ、ルールブックに忠実であることは、結局のところあまり良いことではないと感じました。笑
デザートの例は、面白いですね。私自身もレシピは基本的に守ろう。という考えですので、その内容に沿ってできた時に快感を覚えるタイプです。笑
まあ完成形のデザートの味を知らなかったが故に、レシピ通りに作らざる得なかった。ということもありそうですね。
ただ無意識に枠にハマった考え方に陥り、窮屈な思いをしている可能性は十分あるように思います。食べてくれる人が笑顔になってくれるデザートを作るのが本来の目的ですので、その手段に固執する必要はないと思います。
これまでは客観的なデータを元にお話を伺わせて頂きましたが、皆さん自身のことについても聞かせてください。
これまでに、日々の生活の中で、自死を考えたり、心身の不調を起こして悩んだりしたことってありますか?
んー、自分は、人生は日々学び成長していく大切なものだと思っているので、自死を考えたことはありません。
ただ、フルタイムで働くようになってからは、友達をたくさん作ることができずにプレッシャーを感じるようになり、思い悩む事が増えました。
ただ会社の外で友達を作り、自分自身の目指すゴールに集中する事で乗り切っています。
様々な環境やコミュニティに属することは大切ですよね!
目の前の環境が全てだと思い込んでしまうと、何かと辛くなる事があると思います。
ただいくつか選択肢を持っておくことで、例え辛い事があっても、俯瞰して見ることができたり、逃げ出したりする事もできると、私も感じています。
私はですね、子どもの時にトラウマとなる出来事があり、愛する人を失うことに過度の恐怖心を持っています。
このトラウマが引き金となって、時折パニックと不安に悩まされることがあります。
今ではだいぶ対処できるようになりましたが、初期の頃は慢性的な不眠症に悩まされ、普通の生活を送ることが困難でした。
ただ家族の存在が大きいです。
いつも私が安心する言葉をかけてくれるので、心を落ち着かせて、過ごすことができています。
Kritiさんにとっては、家族はかけがえのない存在ですね。
不安に悩んでいる時の解消法や取り組みはありますか?
そうですね、自分が不安に思っていることや悩んでいることを信頼できる人に相談することで、対処しています。
あとは、叶えたい夢や計画を持つことも、根拠のない不安を取り除くのに役立つと思います。なので、絶えず自分の夢や計画を意識しています。
確かに叶えたい夢や生きる目的があると、目の前の悩みが晴れるかもしれませんね。
ちなみに今、kritiさんが持たれている夢や叶えたいことはどんなことですか?
率直に言って、今のところ大きな夢はないんです。
ただ、今を大切にして、日々向上していきたいと思っています。
大きな野望を持ちたいとは思っていますが、今のところ自分の情熱を見出すことができません。またそれが存在するかどうかも分かりません。
だから今は、自分の天職を見つけられるかどうか、いろいろなことに手を出しているところです。
これまで、ご自身のことを伺いました。
次は、社会全体のことをディスカッションさせてください。
自死や心身の不調で悩む人を減らそうと思った場合、どんな方法があると思いますか?
日本に関していえば、労働条件が改善されれば、若い人たちが命を立たざるを得ない状況を改善できると思います。
そして先ほども話しましたが、もっと働く本人が、自分が何を望んでいるのかを知る能力が必要だと思います。
個人の幸福度指数を見ると、北欧や西欧の国々は高い傾向があります。
何かで聞いた話になりますが、子どもたちと様々なところへ出かける中で、自分自身と向き合い、幸せになるためにはどうしたら良いかを考えるキッカケを与えるようにしているようです。
日本においても、このような考え方や行動を真似してみると良いかもしれません。
私は、メンタルヘルスの問題を正当な理由として仕事を休職したり、治療を受けたりするための意識改革が日本においては必要だと思います。
また、学校のカリキュラムや企業での瞑想やセラピーの実施、すべての機関で心理士の存在を義務化すること、人間の行動や心理学の研究を促進することなども大切な取り組みだと思います。
是非とも他国の取り組みを参考に、若くして自死を選択せざる得ない人たちを減らせるよう、メンタルヘルスケアについての取り組みを促進して欲しいものです。
確かに新たに何かを作り出す。というより、他国の事例を取り入れてより良くしていく方が、より確実に悩んでいる人たちの助けになりそうですね。
また厚生労働省やNPOなどが、既にしている取り組みもいくつかあるので、それを幅広く認知できている状態にすることも必要かもしれません。
ちなみに、Kritiさんご自身として何か取り組まれていたり、できそうなことはありますか?
周りの人に親切にする。ということを意識的に心がけて行動しています。
普通に生活している中では、なかなか友達や同僚が直面している問題を知ることはできませんので、思いやりと寛容を持って接することが、その人たちの心の支えになると思います。
また大切な人に対しては、定期的に連絡をとったり声かけしたり、元気にしているかどうかを確認するようにしています。
もしそこで問題を抱えていると感じたら、どんな方法でも躊躇せずに助けの手を差し伸べるようにしています。
例えば悩みを抱えている人にとって、元気な「こんにちは」の一言だけでも、非常に大きなエネルギーを与えると思います。
挨拶を通して、次の日も生きていこう!という意志を与えてくれることがあることも忘れてはいけないと思います。
何気ない挨拶が、悩みを抱えている人の支えになるということは、あまり考えた事がありませんでした。子どもの頃は近所の人にも、大きなこえで挨拶していましたが、大人になってからはその頻度が減ったように思います。。。
自死と聞くとどこか他人事で、遠い出来事のように思っていましたが、私たちの日常生活の延長線上にあることで、誰もが関係することだということに、改めて気づかされました。
また日々の生活において、仲の良い友達や同僚、家族などには思いやりを持って接し、困ったことがあれば手を差し伸べる姿勢があれば、社会全体で自死を選択せざるを得ない人を減られるかもしれない。と思いました。
皆さん、本日は本当にありがとうございました。
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