日本語の「褒め」って難しいですよね。 

YOMOYAMAスタッフの海外留学生と話をしている時、こんな話題になりました。
私自身、相手との円滑な関係性を築くために、日常的に褒めるコミュニケーションをしていますが、それが海外留学生を戸惑わせているとは驚きでした。
良かれと思って使っている褒めが、逆に戸惑いを生んでいるとは…

なぜ日本語の「褒め」が海外留学生たちに刺さらないのか、話を聞いてみました。

マリアさん、こんにちは
今日は、大学での研究内容についてお話を伺わせて頂きたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
早速ですが、どのような研究をされているのでしょうか?

日本語における「褒め」について研究をしています。

「褒め」ですか。
興味深い研究テーマですね。
それにしても何故、「褒め」を研究テーマにしようと思ったのですか。

ブルガリアの大学を卒業後、現地の高校で日本語を教えていました。
ブルガリアに留学中の日本人学生と話をしていた際に、学生さんの行いを「さすが!」と褒めたんですよ。そうしたら、学生さんの表情が曇りました。
あれ? どうして褒めているのに、冴えない表情をしているの?と不思議に思いました。
 
あとで分かったのですが、会話の流れの中で伝えた「さすが!」と言う褒めの意図を汲む事ができず、逆に悪いことを指摘された。と思っていたようです。
 
この時思ったんです。
話の流れや発言者の立場などによって、適切な褒め方って変わるんだなって。
こちらが意図した褒めが、効果的に届ける乗って難しいなって。

相手に対してプラスの効果を狙った「褒め」が、マイナスに繋がってしまうのは非常に残念ですので、日本語の「褒め」について、深堀して研究してみようと思いました。

日本語って難しいですよね。
同じ言葉でも、状況によって全く異なる意味として、相手に伝わる事がありますよね。

そうなんです。
私自身の経験なのですが、日本に来てすぐの頃、友達から笑顔で「顔が小さいね」と声をかけてもらったことがありました。
なぜこんなに失礼なことを言うのかな?と、その時は落ち込みました。
と言うのもブルガリアにおいて「顔が小さいね」というのは、「醜いね」という意味だからです。
その後、私の容姿を褒めてくれるために、言ってくれた言葉と聞いて安心しました。笑
 
あと「鼻が高い」と言うのも、日本独特の表現ですね。笑

「顔が小さい」「鼻が高い」と言う表現も、その言葉の発言タイミングや背景などを知らないと、
異なった意味として理解しちゃいますね。
私も日本語の語彙が乏しいので、勘違いをする事が多々あります。笑
 
ちなみにブルガリアから見て日本は、非常に遠い国の一つだと思うのですが、どのようなキッカケから日本語に興味を持たれたのでしょうか?

元々、外国語に興味を持っていて、最初はスペイン語を習おうと思ってました。
ただ母と話している時に、近くていつでも行ける国の言語もようけど、遠い国の言語で、言語体系も異なるものを選んでも良いんじゃない。とアドバイスをもらったんです。
その時に思いついたのが日本語でした。

私の父は、医師の仕事をしているのですが、数十年前に日本に研修に来た事があります。
帰国時のお土産にキティーちゃんのおもちゃをもらったり、綺麗な景色の写真を見せてもらったりしていたので、私の中では身近な国一つでした。
当時のブルガリアは、経済が停滞しているタイミングでしたので、日本の様子がとてもポジティブで印象的に残ってました。

ご両親の影響もあり、日本に興味をもたれたのですね。
なぜ日本語を勉強しようと思われたのか気になっていたのですが、スッキリしました。

現在の研究に話を戻して、日本語の褒めについて調べる中で印象的な内容や気付いた点があれば、教えてもらえないですか。

研究とは直接関係ありませんが、あるイベントでブルガリア産のバラを使用した化粧品を販売するアルバイトをしていました。
その際、お客さんに化粧品を試してもらった際の反応がとても印象的で、お客さんが「いい香りだね」など、製品を褒めるコメントをしても、購入を見送られるケースが多かったです。
 販売員の私に対して、断る事で嫌な気持ちにさせないための配慮だとは思うのですが、NOということを直接言わず、製品を褒めながら遠慮する気持ちを伝える。というのは、日本ならではの丁寧な対応で興味深かったです。
もちろん人にもよりますが、傾向的にこのような対応をされる方が多い印象でした。

もし私がお客さんの立場なら、同じような断り方をすると思います。笑
このような対応は、誰かに教えられた訳でもなく、無意識に行っていますが、言語や文化的な背景が反映されていると思うと面白いですね。

はい、何気ない会話の中においても、日本語ならではの褒めの特徴が潜んでいると思います。
母国のブルガリアでは、相手が良い行いをした時に褒める言葉を相手に伝えます。
ただ、日本ではシーンや文脈などによって、全く異なる意図が含まれている事があり、海外の人からすると理解に苦しむ事が多々あります。

日本語は難しい。とよく言われますしね。

大学などで話をしている時、なかなか話が上手く伝わらないな。と思う事があります。
そうゆう時に限って「日本語上手だね!」とフォローが入る事があるのですが、こう言われると、やっぱり上手く伝わってなかったんだな。と確信します。笑

表面的な言葉の意味と話者が意図している内容が、真反対なんですよね。
最初は、意図が掴めず混乱していたのですが、最近はようやくこのような会話にも慣れてきました。

確かに無意識に、このような会話をしていますが、コンテクストによって意図する事柄が異なりますので、海外の方からすると非常に難しいですよね。
私自身、鈍感なところがありますが、会話の中で相手の真意を把握するのに苦労することがあります。
ここまでくると、より深い日本人の考え方について理解する必要がありますね。
また地域によっても、この考え方は異なると思いますので、日本という大きな括りでは語りきれないですね。

そうなんです。
以前、京都の大学にも留学していた事があったのですが、今住んでいる東京とはまた異なる考え方があり、円滑に会話を進めるのが難しかったこともありました。

日本語環境でしか生きてこなかった私からすると、疑問にすら思った事がありませんでしたが、マリアさんとお話して日本語の面白さ・日本人ならではの考え方に気付けて非常に面白かったです。
最後に、今後の研究の展望について教えてもらえないですか。

今期は、インタビューシーンにおける褒めを深堀して行く予定です。
シーンを限定する事で、より体系的に調査を進められると思っています。
そして最終的なゴールとしては、日本でより良い人間関係を構築するにはどうしたら良いかを言語的な観点からまとめ上げて行く予定です。
そうする事で、私のような他言語話者の人たちの力になれると思っています。

体系的な情報がある事で、助かる海外の方は多いと思いますので、是非とも目指されてるゴールに行き着くよう研究を頑張ってください!
そして、日本語話者の自分たちもその内容を知る事で、日々の生活に役立てる事がありそうですので、また結果がまとまりましたら是非内容をシェアしてもらえると嬉しいです。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。